妊婦さんが気をつけるお口のこと《赤ちゃんの歯に必要な栄養素》

みなさんは、赤ちゃんの歯はいつ頃から作られると思いますか?実は、赤ちゃんの歯はお腹の中にいるときに既に作られています。そのためお母さんの健康状態や栄養状態が赤ちゃんの歯に大きく影響します。

歯の丈夫な子どもにするためには、妊娠初期からの健康管理、バランスのとれた栄養管理がとても大切になります。

赤ちゃんの歯はお腹にいるときに作られる

妊娠中のお母さんのお腹の中で、赤ちゃんの乳歯や永久歯は作られていきます。乳歯の芽である歯胚(しはい)は、妊娠7週目頃からつくられ、妊娠4〜5ヶ月ごろくらいからは、カルシウムが沈着して硬くなる「石灰化」がはじまります。そして、妊娠後期には乳歯の頭の部分(歯冠部)の形成が進みます。

永久歯も発育している

永久歯の芽もお腹の中で発育しながら出生後から石灰化がはじまります。この時期にカルシウムが不足すると永久歯を弱くする原因となります。赤ちゃんやお母さんの健康に必要な栄養と同じように、歯の発育にもバランスのよい栄養が必要です。お母さんの食事が、赤ちゃんの歯の質に大きく影響してきます。

歯の構造と役割

歯はエナメル質、象牙質(ぞうげしつ)、セメント質という3つの硬い組織とそれに囲まれた歯髄(しずい)と呼ばれる歯の神経からできています。エナメル質は歯の一番外側にあり、人間のからだのなかで一番硬いとされています。その内側には、歯の形を作っている象牙質と呼ばれる組織があります。歯肉より下側にある象牙質の外側は、エナメル質ではなくセメント質という組織で覆われ、歯と骨とをつなぐ役目をしています。歯髄は血管を含んだ神経で、お口の中の感覚や栄養、修復や防御をしています。神経がなくなると周囲の色が変色したり、歯ももろくなってしまいます。

歯に必要な栄養素

健康な歯を保つために必要な栄養素として、主に、「タンパク質」「カルシウム、リン」「ビタミンA・C・D」が挙げられます。タンパク質は歯の大事な基礎を作り、カルシウムとリンは、強い歯を作ります。また、ビタミンA・C・Dはエナメル質や象牙質を良質なものにする働きがあります。これらの食品は出生から永久歯が生え揃う12〜15歳くらいまでとても大切になるので、日々の食事からしっかり摂りましょう。

【タンパク質】歯の基礎を作る

タンパク質は、皮膚や筋肉、内臓や骨などを構成する主要な成分です。身体の組織と同様に、歯のまわりの、歯肉・歯根膜(しこんまく)・歯槽骨(しそうこつ)といった歯周組織にとっても大事な構成成分です。また象牙質やセメント質にも、コラーゲンという繊維状のタンパク質が含まれるため、歯の基盤をつくるためタンパク質は必要不可欠です。

タンパク質の1日あたりの推奨摂取量は「体重1kgあたり約1g」妊娠初期は+0g、妊娠中期では+10g、妊娠後期では+25gを追加することが推奨されています。肉や魚100gあたりに含まれるタンパク質はわずか20gなので、朝昼晩の食事と間食でこまめに取り入れる必要があります。

《主な食材》豚肉(ロース)、魚介類、卵、牛乳、豆腐など

【カルシウム・リン】歯の石灰化を助ける

カルシウムは歯を作る際に大きな役割を果たし、歯を強くしてくれます。また、歯が成長しきった大人になってからも、再石灰化を助けてくれる効果も期待できます。日本人のカルシウム摂取量は不足しがちと言われていますが、牛乳や乳製品は、他の食品に比べてカルシウムの吸収率が高いうえに、1回の摂取量も多いので、効率よくカルシウムがとれるのでオススメです。カルシウムの推奨摂取量は1日650mgで、牛乳(200ml)には220mgのカルシウムが含まれています。

※インスタント食品や加工品など、リンを多く含む食品と同時に摂取するとカルシウムの吸収が阻害されるので注意が必要です。

《主な食材》

【ビタミンA】歯の表面のエナメル質を作る

ビタミンAは、歯のエナメル質を作る効能があります。エナメル質は人体で一番硬い組織で、歯の一番外側を覆っています。1日あたりのビタミンA推奨摂取量は650〜700µgRAE、妊娠後期は+80µgRAEです。100gのにんじんで720µgRAEほどのビタミンAが含まれています。うなぎ1人前(1500µgRAE)や鶏レバー100g(14000µgRAE)などビタミンAの含有量の多い食品を毎日大量に続けて摂ることは控えたほうがよいでしょう。

ビタミンAの取りすぎは、胎児の奇形を引き起こすリスクを上げることが分かっています。ビタミンAの過剰摂取には気をつけましょう。(普通の食事をしている分にはほぼ心配ありません。)

《主な食材》かぼちゃ、ほうれんそう、レバー、にんじん、わかめなど

【ビタミンC】歯の象牙質を作る

ビタミンCは、歯の象牙質をつくる栄養素の1つであり、カルシウムと同じく強い歯の基礎となるものです。また歯周組織に含まれるタンパク質、コラーゲンの合成を促し、歯をささえる土台を健康に整えます。ビタミンCは水溶性、かつ熱に触れると損失しやすい栄養素のため生で食べられるフルーツ類は特にオススメです。妊娠中のビタミンCの1日の推奨摂取量は110mgで黄色のキウイフルーツには100g中に140mgが含まれています。

《主な食材》焼きのり、小松菜、じゃがいも、ブロッコリー、キウイ、みかんなど

【ビタミンD】カルシウムの代謝や石灰化に影響

ビタミンDは、骨にカルシウムが付着するのを助ける接着剤のような役割があり、強い骨や歯の形成を促します。ビタミンDが足りなければ、いくら乳製品や魚や大豆を食べてもカルシウムを体内に取り込むことはできません。そのため、カルシウムを多く取り入れたい場合は、ビタミンDが豊富に含まれている食物も同時に食べる必要があります。 ビタミンDの1日の推奨摂取量は8.5μgで、鮭は50g当たり16μgが含まれています。

《主な食材》干しシイタケ、しめじ、さんま、鮭など

ビタミンDが不足すると「エナメル質形成不全症」になることも

「エナメル質形成不全症」とは、歯の表面のエナメル質が欠けたりくぼんだりして、脆くなっている状態のことです。乳歯のときの虫歯や外傷といった局所的なことが原因の場合と、病気や栄養障害といった全身の障害が関係している場合があります。栄養障害の1つに「ビタミンD」の欠乏も要因と考えられています。ビタミンDは、カルシウムやリンの吸収を促進する、骨や歯の形成に欠かせない栄養素ですが、歯の成長期である妊娠期~授乳期~離乳期にビタミンDが欠乏すると、うまく歯が作られず、エナメル質形成不全になってしまうといわれています。ビタミンDは日光浴でも生成されるため、食事はもちろん日光浴も意識的にしましょう。

大切な赤ちゃんの歯を守るために・・・

赤ちゃんの歯の強さは「石灰化」で決まる

赤ちゃんの歯の強さは、「歯の石灰化がいかに進んだか」によって決まってくるといわれています。胎盤が完成し、胎児と母体が臍帯でつながるようになる4~5カ月ごろに胎児の歯の石灰化はどんどん進みます。この時期に積極的にカルシウムが多い食事を摂ることで、強い歯を作るためのカルシウムの効果を最大限に得られます。カルシウムだけではなく、リンも歯を作る際に大切な成分です。どちらも強い歯を作るのには、大切な成分なので、積極的に摂取しましょう。

まとめ

赤ちゃんの歯は、お母さんのお腹の中にいる時から既に作られ始めています。丈夫な歯をつくるためには、カルシウムやリンなどのミネラルのほかに、良質のタンパク質やビタミンA、C、Dなども必要です。しかし、いくら歯に良いからといって過剰に摂取しすぎるのではなく、食事はいろいろな食品を組み合わせて、バランス良く食べましょう。

大切な子供のために妊娠初期からバランスの取れた食事を意識して、お子さまに「強い歯」をプレゼントしてあげましょう。

記事監修 Dr.中野 純嗣
なかの歯科クリニック
院長 中野 純嗣

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