乳歯の虫歯の特徴となりやすい場所とは?

子供の発育・成長において、乳歯の発達は大人の歯(永久歯)の基礎的な機能を築く上でとても重要な過程です。

「乳歯は虫歯になっても生え変わるから大丈夫・・・」というのは誤りで、乳歯の虫歯は大人の歯である永久歯の歯並びや永久歯の成長にも悪影響を与えてしまいます。そのような重要な役割を果たしている乳歯ですが、永久歯に比べて虫歯になりやすく、進行も早いため注意が必要です。

そこで今回は、乳歯の虫歯の特徴と虫歯になりやすい場所についてのお話をします。

乳歯は虫歯になりやすい

子供の歯(乳歯)は大人の歯(永久歯)に比べると、歯質が柔らかいのが特徴です。また、歯の一番表面にあるエナメル質も永久歯の約半分しか厚みがありません。そのため、一度虫歯ができてしまうと進行が早く、さらには神経に到達してしまうスピードも早いです。特に、小さな子どもは上手に痛みを伝えることが難しいこともあり、大人が気付いたときには神経にまで達しているなど、重症化するケースも少なくありません。

乳歯の虫歯の特徴

乳歯の虫歯は黒ではなく白いことが多い

乳歯の虫歯は大人の虫歯のように黒ではなく、白いことが多く虫歯になっても気づかずに進行してしまいます。健康な乳歯は表面に透明感があるので、艶のある透き通った白色ですが、虫歯に冒されると、艶のない白い色になります。黒い虫歯はゆっくりと進行する虫歯で、白い虫歯は早く進行する虫歯といわれています。乳歯は歯がやわらかいので早く進行する白い虫歯が多いのです。

乳歯は虫歯になると神経まですぐに達してしまう

乳歯は永久歯に比べて、酸に弱く、表面のエナメル質と象牙質が薄く、やわらかいという特徴があります。エナメル質までなら再石灰化(唾液中のミネラルを取り込んで修復する機能)で治る可能性がありますが、その下の柔らかい象牙質まで入ると虫歯は一気に広がってしまいます。神経まで虫歯が進むと治療も難しくなり、お子さまの負担も大きくなるためできるだけ早めの受診をおすすめします。

乳歯の虫歯がよくできる場所

上顎の前歯と前歯の間

3歳までは上の前歯が虫歯になりやすく、特に歯と歯の間に注意が必要です。哺乳瓶で長くミルクやスポーツドリンクなどを与え続けると虫歯(哺乳瓶虫歯)ができます。下の前歯は、唾液が出る入り口があるので唾液の自浄作用などにより虫歯になりにくい傾向にあります。

奥歯と奥歯の間

子供の乳歯の虫歯が一番よくできる場所は、奥歯と奥歯の間です。乳歯の奥歯と奥歯の間は汚れが見えづらくすき間もないため、歯ブラシでは汚れを落とすことが難しい場所です。この場所は、歯ブラシの他にデンタルフロスでの除去が必要です。デンタルフロスをしているときに、引っ掛かりがあるようなら虫歯の可能性があります。

奥歯の溝

乳歯の奥歯の溝は深く、虫歯菌が溜まりやすい形をしています。あまり溝が深いと歯ブラシが奥まで届かないために虫歯菌が残ってしまい、虫歯が進行していきます。仕上げ磨きの際は、より一層丁寧に磨くように心がけましょう。奥歯の溝の虫歯は「シーラント」で予防することができます。(↓下記で紹介しています。)

乳歯と歯茎の境目

子どもは歯茎部分に歯ブラシが触れると痛いため、乳歯と歯茎の境目は磨き残しが多くなってしまいやすい場所です。磨けていない事が多いと乳歯の歯ぐきの境目に帯状の虫歯ができやすくなります。乳歯と歯茎の境目は、力を入れすぎずに丁寧に磨くようにしましょう。

乳歯を虫歯から守るために・・・

おやつは決まった時間にする

私たちの口内では、歯を溶かす「脱灰」と、修復を行う「再石灰化」が繰り返されています。脱灰と再石灰化が同じ程度で繰り返されている間は、健康な歯が保たれます。しかし、絶え間なく飲食をしてしまうと、常に脱灰が続き再石灰化が追いつかない状態になってしまいます。そのため、おやつや食事の時間はしっかりと決めて、歯が再石灰化する時間を作ってあげることが大切です。

仕上げ磨きは小学生の高学年ごろまで行う

小学生の高学年になるぐらいまでは、仕上げ磨きをしてあげることをお薦めします。また、歯ブラシだけでは汚れを除去しきれないため、子ども用のデンタルフロスの併用が必要です。歯磨きは歯並びやお子さまの癖によって磨き方は少しずつ異なります。今の歯磨きに不安のある方は、かかりつけの歯科医院でお子さまに合った歯磨き方法を聞いてみてください。

歯科医院での虫歯予防

フッ素塗布

歯科医院でのフッ素塗布は医療機関専用でフッ素濃度が高く、家庭でのフッ素ケアに比べて持続した虫歯予防効果が期待できます。乳歯がある程度生えそろうタイミングから始めて、永久歯が生えそろった後まで3ヶ月に1回程度の頻度で続けることが理想です。フッ素塗布は子どもだけでなく、虫歯リスクの高い大人の方にも虫歯予防効果が期待できるのでオススメです。

シーラント

乳歯の奥歯の溝に虫歯菌が入り込まないように「シーラント」をします。シーラントとは乳歯の奥歯の溝をきれいに清掃して、薄いプラスチックでコーティングすることです。乳歯の奥歯は深く、歯ブラシでは届きにくい場所です。シーラントをすることによって乳歯の溝からの虫歯を予防できます。

唾液の検査

唾液の検査をすることで、虫歯を引き起こしやすい原因を知ることができます。唾液検査によって、お口の中にいる虫歯菌の量や、プラーク(歯垢)の状態、唾液の量などを調べ、虫歯のなりやすさを知ることができます。その結果を元に、食生活やご自宅でのケアの適切な改善方法が分かります。

大切な乳歯を虫歯から守りましょう

最近では歯科医院は、虫歯になってから行く場所ではなく予防として来院する方が増えています。お子さまの大切な乳歯を守るために、お家でのケアと歯科医院によるケアを両立させて虫歯のない歯を目指しましょう。

万が一、虫歯になっている場合でも早めの治療を行う事ができれば、お子さまへの負担軽減だけでなく永久歯への影響も極力減らす事ができます。乳歯を虫歯から守ることは、将来の歯である永久歯を守ることでもあります。お子さまの歯のことで気になることがあればいつでもお気軽にご相談ください。

まとめ

乳歯は永久歯に比べて歯質がやわらかく、エナメル質も薄いため虫歯になりやすく進行も早いです。上記で紹介した虫歯になりやすい場所は、特に注意して磨きましょう。お子さまの虫歯予防には、おやつの時間を決めたり、仕上げ磨きを今以上に丁寧に行うなど日頃からのお家でのケアも非常に大切です。

歯科医院でも虫歯予防としてフッ素塗布やシーラント、唾液の検査などお子さまに合ったケアを行うことができます。また、今の歯磨きの仕方に不安がある方は歯磨き指導も行なっています。習慣的な正しいセルフケアと歯科医院でのケアでお子さまと一緒に「虫歯ゼロ」を目指しましょう。

記事監修 Dr.中野 純嗣
なかの歯科クリニック
院長 中野 純嗣

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