乳歯に虫歯があっても「乳歯は永久歯に生え変わるから大丈夫・・・」といって、決して虫歯をそのまま放置してはいけません。乳歯の虫歯を治療せずに放置すると永久歯の虫歯リスクが上がってしまったり、歯並びが悪くなってしまうなどの悪影響を及ぼします。
みなさんは乳歯の生えている下では、すでに永久歯の準備が始まっているという事を知っていますか?
6歳頃になると永久歯が生えてきますが、実はお母さんのお腹の中にいる頃の胎生3ヶ月半頃から、永久歯の芽である歯胚の形成も始まっています。出生後、乳歯が生えてからも永久歯は、歯肉の中で数年かけて成長していきます。そして、乳歯の下で永久歯が生える準備ができると、乳歯の根が吸収され、グラグラし、抜け落ちます。乳歯が抜けて空いたスペースに永久歯が生えてくるというわけです。そのため、乳歯が虫歯になってしまうとその影響は下にいる永久歯も受けてしまいます。
では、乳歯の虫歯をそのまま放置していると、一体どのような悪影響があるのでしょうか?
虫歯は虫歯の原因菌によって進行します。乳歯が虫歯に罹患しているということは、お口の中が虫歯になりやすい状態に既になっています。この状態では、他の乳歯だけでなく、これから萌出する永久歯も虫歯に罹患するリスクが高まります。
虫歯が大きくなり神経が死んでしまった場合、そのまま治療せず放置しておくと歯の根っこの先に膿ができてしまい、その下から生えてくる永久歯が変色したり、形成不全を起こしたりと悪影響を及ぼすことがあります。
乳歯には永久歯が生えてくる場所を確保する役割もあります。乳歯の虫歯がひどくなって、自然に生え変わるよりも早く抜けてしまうと、両隣の歯が徐々に前方に傾き始めます。すると、待機していた永久歯のスペースが、十分に確保できなくなり、変な方向に生えたり、ずれてしまったりして、歯並びが悪くなってしまうのです。
虫歯によって歯が痛くなると、その影響で食欲がなくなってしまったり、痛みのせいで、硬いものや食物繊維の多い野菜などが咬みにくいので、食べたがらないことが多くなります。食べるものに偏りが出る事で成長期の体づくりにも影響を及ぼしかねません。
成長期の子供のあごは、上下の歯がきちんとかみ合わさって、しっかりと噛むことで発達します。しかし、虫歯があると痛みを避けようと、虫歯がない方の歯で噛むようになります。そして虫歯がなかった側の歯も虫歯になると、どちらもよく噛むことができず、食べ物を飲みこんでしまうようになります。その結果噛む回数が減り、噛む力やあごの成長がきちんと促されずにうまく発達しないことが考えられます。
虫歯予防には、しっかりと歯を磨いてケアをすることが何より大切です。お子さまの仕上げ磨きは時間をかけて丁寧に行い、その時に歯の状態のチェックもしましょう。虫歯と聞くと黒色をイメージされる方も多いと思いますが乳歯の虫歯の初期段階の特徴は「歯の表面が白く濁る」「歯と歯茎の溝の部分が黄色っぽくなる」ということが挙げられます。お子さまの歯磨きをしていて少しでも違和感を感じる場合は、そのままにせず歯科医院を受診することをオススメします。
乳歯の虫歯については「乳歯の虫歯の特徴となりやすい場所とは?」という記事でもご紹介していますので、チェックしてみてください^^
いくら気を付けていても、完璧な歯磨きをすることは難しいものです。虫歯のリスクを最小限にするためにも、痛みや症状がなくても、定期的(3ヶ月に1回程度)に歯科医院を受診しましょう。定期検診でお口の掃除をしてもらったり、歯の状態をチェックしてもらう事で見た目では気づきにくい初期虫歯が見つかることもあります。また、歯磨き方法を指導してもらうこともできるため、日々のケアにも役立ちます。万が一、歯のトラブルが起こったとしても、歯科検診を受けていれば早期発見・治療ができるのでお子さまの負担も軽くする事ができます。
乳歯はいずれ生え変わりますが、虫歯をそのまま放置すると将来の歯である永久歯の発育を妨げたり、歯並びが悪くなるなど様々な悪影響を引き起こします。また、生え変わり期に乳歯の虫歯があるということは口の中には虫歯菌がいっぱいいることになります。生えたての未成熟な永久歯も当然虫歯のリスクが上がります。乳歯が虫歯になってしまったらそのまま放置せず、できるだけ早めに治療を行いましょう。
乳歯を綺麗な状態で保つ事は、将来の歯である永久歯を守ることでもあります。毎日のお家でのデンタルケアと歯科医院での定期検診を両立させ、お子さまの大切なお口の環境を守っていきましょう。お口の状態で気になることがあればいつでもご相談ください。
記事監修 Dr.中野 純嗣
なかの歯科クリニック
院長 中野 純嗣