赤ちゃんが指しゃぶりをすることは、成長過程においてごく自然な行動です。一般的に、成長とともに指しゃぶりは自然とおさまります。しかし、成長しても指しゃぶりが長期間に及んでくると歯並びや口腔の発達に影響を与える可能性があります。
そこで今回は、お子さんのお口の健康を守るために、指しゃぶりをやめさせるべきタイミングと方法についてご紹介します。
指しゃぶりは、指を上の歯の裏側にある「口蓋(こうがい)」という部分に押し付けるしぐさのことです。乳児期から幼児期にかけて、ほとんどの子どもが幼少期に経験する自然な行動の一つです。一般には指しゃぶりは生後2〜4ヶ月ごろからはじまり、成長とともに自然に減っていくとされています。
指しゃぶりが見られるようになった頃の赤ちゃんは、口のそばにきた指やものをなんでも無意識に口に入れてしゃぶります。これは、ものの存在や形や感触といった性質を確認するためです。指しゃぶりをするのも、自分の指や手の存在を確認したり、形や味を学習したりしていると考えられます。赤ちゃんが発達する過程で重要な行動なので、この時期の指しゃぶりは無理にやめさせる必要はありません。
指しゃぶりには不安や不快な気持ちをなだめて、気持ちを落ち着かせる役割もあります。指しゃぶりは母乳や哺乳瓶を吸う動作と似ているため、この動作を通じて安心感を感じています。手持ち無沙汰で退屈な時や眠い時、不安を感じている時に、気持ちが落ち着くと言われています。
指しゃぶりは、ある程度の年齢までは無理にやめさせる必要はありません。ただし長時間・長期間の指しゃぶりは形成途中の顔の骨格や歯の成長に影響をおよぼします。そうすると正しい位置に歯が並ばなくなるため、歯並びや噛み合わせが悪くなる可能性があります。乳歯がある程度生えそろったあと(2歳半~3歳ごろ)の長時間の指しゃぶりは、歯ならびに影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
1~2歳頃の指しゃぶりは、歯並びを含めたお口の健康への影響はないと言われています。そして、3歳を過ぎると保育園や幼稚園で友達との集団生活に関心を抱くようになり、指しゃぶりする癖も徐々に減っていきます。指しゃぶりをやめさせるタイミングも3歳ごろが目安です。その理由は、4歳以降も指しゃぶりが続いた場合に歯並びやかみ合わせへの影響が出てくるためです。
【指しゃぶりが及ぼす影響】
● 上の前歯が前に出て、上顎前突(出っ歯)につながる
● 上下の前歯がかみ合わず、隙間ができる開咬(かいこう)につながる
● 開咬により、舌足らずな発音になる
● 口呼吸をしがちになる・・・など
4歳以降も頻繁に指しゃぶりが見られるようであれば、クセになってしまっている可能性もあります。指しゃぶりをやめさせるときは、焦らず子どもの状態を見ながら、子どもの意思でやめられるような声がけをしながら進めていきましょう。
退屈したり眠かったりすると指しゃぶりする子は多いです。つみきや車のおもちゃ、絵本などの興味のあるもので遊んでいる間は指しゃぶりが起こりにくくなります。寝る前に絵本を読むなど、指しゃぶり以外の習慣を作ることでも自然にやめさせることが可能です。
手指を使った遊びをよくしているうちに、指しゃぶりが自然に減っていきます。手持ち無沙汰になると、つい指しゃぶりをしてしまうことが多いものです。集中して手先を使うことで、指を口に持っていくことを防げるでしょう。
子どもが自分で納得して「指しゃぶりをなくしていこう」と行動するようにすることも大切です。言葉でのコミュニケーションが取りやすくなっている場合は、指しゃぶりをしないほうがいい理由を優しく説明してあげるのもオススメです。「手についているばい菌が口の中に入ったらどうなると思う?」などと問いかけて、子ども自身が考えるように促すのも一つの方法です。
環境の変化によって、子供もストレスや不安を感じることがあります。指しゃぶりをして、そのストレスや不安を落ち着かせたり、解消していることもあります。ストレス・不安を抱えていると思ったら、スキンシップをとったり、優しい言葉をかけて、安心できる環境をつくってあげるようにしてください
カレンダーやシールなどを使って、指しゃぶりをがまんできたらシールを貼り、保護者の方が褒めるなどしてやる気を持たせる方法もあります。誕生日や入園日など節目となるタイミングをゴールに決めて、心の準備を整えて集中的に取り組むのも効果的です。
長時間・長期間の指しゃぶりは、歯並びに影響を及ぼしますが、小さい子どもにとっては、精神的な安定を得るために必要な行動である場合もあります。無理にやめさせようとすると、不安や緊張がかえって増してしまったり、不安や緊張がほかの行動に現れてしまったりすることが考えられます。子ども自身がやめることに前向きになれるよう、親御さんが根気よく支援することが大切です。指しゃぶりをいきなり止めさせるのではなく、子どもの不安・ストレスを取り除くよう環境を整えてあげることから始めましょう。
小児歯科では家庭で指しゃぶりのくせがなかなか治らない場合の指導もしています。指しゃぶりによって上下の前歯にすき間がある、前歯で食べ物がかみづらい、発音がはっきりしないなど不正咬合の症状がみられる場合は、治療を行う必要があります。指しゃぶりがなかなかやめさせることが難しくて悩まれている場合は、小児歯科へ相談をしましょう。
お子さまの指しゃぶりに悩まれている方は「なかの歯科クリニック」へお気軽にご相談ください。
子供が成長して大人になってから健康な歯や顎(あご)を維持していくためにも、幼児期の歯を適切な状態に保つことはとても重要です。かみ合わせが悪いと、食事をちゃんと取れないだけでなく、言葉を正しく発音できないなどの問題が生じます。
指しゃぶりは幼少期の子どもにとって自然な行動ですが、長期間続くと口腔の健康や歯並びに悪影響を及ぼす可能性があります。指しゃぶりをやめさせる際には、おこさまの状態を見ながら効果的な方法を取り入れることが大切です。無理をせず、子ども自身が前向きにやめられるようなサポートを心がけましょう。
なかの歯科クリニックではお母さんと赤ちゃんの健康を一緒に守るための取り組みをしております。
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記事監修 Dr.中野 純嗣
なかの歯科クリニック
院長 中野 純嗣