お子さまの「歯並び」や「顔立ち」は、実は顎の成長に大きく影響されています。
現代の子どもたちは、柔らかい食べ物が増えたことで噛む回数が減り、顎の発達が遅れやすいといわれています。
今回は、管理栄養士の視点から、子どもの顎の成長を助ける食べ方と家庭でできる工夫を詳しくご紹介します。
顎の骨は、歯が生える土台として非常に大切な部分で、噛むことで刺激を受けて発達します。成長期に十分な刺激を受けないと、永久歯が並ぶスペースが足りず、歯並びがガタガタになる・受け口や出っ歯になるなどのトラブルが起きやすくなります。また、顎の成長不足は、横顔が平坦に見えたり、下顎が後退して見えるなどの顔全体のバランスを崩してしまう原因にもなります。
顎の成長には遺伝だけでなく、「食べ方」や「噛む回数」「食材の硬さ」などの生活習慣が深く関係しています。「噛む力」=「顎を動かす筋肉の力」なので、よく噛む食生活こそが自然なあごのトレーニングになります。理想は1口につき約30回ですが、実際は10回以下で飲み込んでしまうことが多いです。まずは、「今より10回多く噛むこと」を目標に、家族で意識してみましょう。
よく噛むことで得られる効果は顎の成長だけではありません。
このように、よく噛むことは虫歯の予防につながったり、食べ物の消化を助けたり、脳を刺激して発達を促したりするなどの様々なメリットをもたらします。
顎を鍛える上でまず知って欲しいのは「硬い食べ物だけ食べればいい」というわけではない点です。以下に示すように、さまざまな食感の食べ物をバランスよく食べることで、顎も健やかに発育していきます。
食材 | 具体例 | ポイント |
---|---|---|
野菜 | ごぼう、れんこん、にんじん、ブロッコリー | 食物繊維が多く、しっかり噛む必要がある |
主食 | 玄米、雑穀ごはん、硬めに炊いた白米 | 咀嚼を増やす基本アイテム |
たんぱく質 | 鶏むね肉、豚ヒレ、焼き魚 | 顎の筋肉と骨を育てる材料 |
おやつ | りんご、するめ、小魚、ナッツ | 噛む習慣を楽しく身につけやすい |
※小さなお子さまには、喉に詰まらないよう柔らかさや大きさを調整しましょう。
しっかり噛んで食べるには、食事に集中できる環境をつくってあげることがとても大切です。食事の際は、テレビを消して「よく噛む食事時間」を確保しましょう。その結果、早食いを防ぐだけでなく、食べ物の香りや形、食感を感じながら自然と噛む回数が増え、顎に刺激が伝わります。
「しっかり噛むと甘みが出てくるよ」「よく噛むとおいしいね」など、噛むことを楽しめる声かけを意識してみましょう。お子さまと一緒に数を数えながら食べるのもオススメです。
煮物を少し硬めに仕上げたり、千切りや薄切りではなく、ざく切りや乱切りにするなど野菜を大きめに切るだけでも咀嚼量が増えます。ある程度の咀嚼を必要とする「やわらかすぎない料理」が顎を強くします。
りんごやとうもろこしをそのままかじる体験も効果的です。子どもは「かじる感覚」が好きなので、楽しみながら自然と顎を使うことができます。
食材の硬さに加え、顎や骨を育てるための栄養バランスも大切です。
栄養と咀嚼の両面からアプローチすることで、丈夫な顎ときれいな歯並びが育ちます。
「口を開けにくい」「片方ばかりで噛む」「いつも口が開いている」などのサインがある場合、顎の成長がうまく進んでいない可能性があります。放置すると、歯並びの発達や噛み合わせに影響することもあります。お子さまに気になる症状があれば、早めに歯科医院でチェックを受けましょう。早めに相談することで顎の成長段階に合わせたアドバイスや早期治療が可能になります。
顎の成長は、特別なことをしなくても「毎日の食事」で育てることができます。毎日の食生活の中で下記の3つを意識することは、顎の成長・正しい歯並び・健やかな顔立ちにつながります。
「噛む」を楽しむ食卓づくり。今日の食事から、少しずつ「顎を育てる習慣」を始めてみましょう。
なかの歯科クリニックでは管理栄養士が2名在籍しております。患者さま一人ひとりに合わせた栄養指導を行いながら、お口と全身の健康をサポートしています。日頃の食生活やお口の状態で気になることがある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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記事監修 Dr.中野 純嗣
なかの歯科クリニック
院長 中野 純嗣