近年、固いものが食べられなかったり、よく噛めない子どもが増加し、あごの発達が不十分であったり、歯並びの良くない子どもが増えているといわれています。
子供の健康なお口の成長には、「咀嚼力」が非常に重要な役割を果たします。そこで、今回は咀嚼力と歯並びの関係についてご紹介します。
綺麗な歯並びは、舌や口周りの筋肉、あごの大きさのバランスが良好な上に成り立っています。そして、この口周りの筋肉やあごの成長を促す上で欠かせないのが「咀嚼力」です。咀嚼力が強く、歯やあごに力がしっかり伝わると、歯やあごの骨は丈夫に成長、発達していきます。あごがしっかり成長していくと、永久歯が生えてきた時にもスペースが十分に確保された状態になるため、綺麗な歯並びを得ることができます。
咀嚼力が弱いと噛む回数も少ないので、あごの骨にかかる力が小さくなり、あごの骨が十分に発達、成長してくれません。あごの成長が進まないため、結果的に歯が並ぶスペースが不足し、歯並びがガタガタになってしまう可能性があります。そのため、子供の歯並びをキレイにしてあげるためには、「咀嚼力」を鍛えてあごの骨を発達させて成長を促す必要があります。
子どもによく「噛む」習慣をつけてもらうには、普段の食生活から見直していく必要があります。根菜類が食事の中心だった戦前に比べ、現代の食事はファーストフードやインスタント食品、ハンバーグやオムライスなど、あまり噛まずに飲みこめてしまうものが多いです。食生活の変化と噛む回数について調べた結果、戦前の食事は約22分の食事時間では1420回噛んでいたのに対し、現代は約11分の食事時間で620回しか噛んでおらず、噛む回数と食事時間とも半分に減ってしまっています。食事の際は、使用する食材選びとともに、調理法を工夫することで日頃から「噛む」習慣をつけましょう。
固い食べ物や噛む回数を増やす食事を意識することで、咀嚼力を向上させることができます。おやつにはスルメや煮干し、せんべい、りんご、ピーナッツやアーモンドなどを与えると、必然的に噛む回数も増えるため、顎の発達が促され、良好な歯並びの発育へと繋がります。
食事の際は噛む回数が増える食物繊維が豊富で、歯ごたえのある食材をメニューに加えてみましょう。
調理法を下記のように工夫することで噛む回数を増やすことができます。
ガムをかむことは「咀嚼力」を鍛えるのに非常に効果的で、口を閉じる、よくかめる、舌を動かす、そのすべてが鍛えられます。方法は簡単で、1日20〜30分くらいガムを噛み続けるだけです、ただし、その時に注意するのは片側だけに偏ってかむのではなく、必ず左右の歯をまんべんなく使ってかんでください。また、ガムを選ぶときは虫歯予防のために甘味料として砂糖を使用したものではなく、キシリトールを100%使用しているものがオススメです。
あごの発達には、左右の動きも大切です。固いものを食べるときには、あごを上下、左右に動かして噛みますが、最近の子どもはあまり噛まずに飲みこめる食事が中心となり、上下にしか噛めなくなっています。子どもが噛んでいる様子を注意深く観察し、食べ物をすり切るようにあごを左右に動かせているか確認してあげましょう。この時、片側の歯だけを使っていると左右のあごのバランスが悪くなってしまうので、左右両方の歯をバランスよく使えているかも注意してください。
噛むときは、噛む「強さ」よりも「回数」を重視するようにしましょう。あごを動かす回数を増やすことで、あごまわりの血流がよくなり筋肉が刺激され、あごは成長してきます。回数の目安は、1口につき30回です。子どもが楽しみながら噛む習慣をつけられるよう、一緒に数えてあげるなど工夫してみましょう。
食事をする際の姿勢も、よく噛む習慣に関係します。足がブラブラと浮いてしまう椅子ではふんばりがきかず、あごに力を込めることができません。しっかりと力をこめて噛むことができるように、身長に合った椅子に座らせて足を床につくようにしてあげましょう。
子供の時は、あごの成長を促すことで上下のあごの位置を整えたり、歯の大きさにあったところまであごの幅を広げて隙間を作ることができます。万が一、歯並びがガタガタがあっても歯が並ぶための隙間を作ってあげれば自然に舌や唇の力で並ぶ可能性もあります。お子さまの歯並びで気になることがあれば、一度小児歯科に相談してみましょう。
小児矯正については子供の矯正を始める最適なタイミングとは?という記事で詳しく紹介しています。よろしければこちらもチェックしてみてください。
子供の咀嚼力と歯並びには密接な関係があります。咀嚼力が十分に発達していないと、あごの成長が遅れ、歯が正しい位置に並ばないことがあります。しかし、普段の食材や調理法を工夫し、しっかり噛む習慣をつけることで、「咀嚼力」を効果的に鍛えることができます。
「噛む」時には強さよりも回数を意識したり、食事をする際の姿勢にも気をつけましょう。子供の歯並びを整えてあげられるように、早期からの咀嚼力の強化を心がけましょう。
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記事監修 Dr.中野 純嗣
なかの歯科クリニック
院長 中野 純嗣