妊娠中は体調の変化が多く、つわりやホルモンバランスの影響で虫歯になりやすい時期でもあります。虫歯には、大きく分けて5つの進行レベルがあり、進行レベルによって症状や対処法も異なります。
今回は、虫歯の進行レベル別の症状や対処法と虫歯予防のポイントについて解説します。
虫歯には3つの要因が影響します。この3つの要素が重なった時、時間の経過とともに虫歯が発生します。
◆歯質…エナメル質や象牙質の状況(歯質)が弱いと、虫歯になりやすく、進行も速くなります。
◆糖質…甘いお菓子や飲料の摂取が多いと、口内環境が酸性になりやすく、歯の再石灰化(唾液の働きによって、虫歯菌が作り出した酸で溶かされた歯のエナメル質を修復するプロセス)の時間が減少するため虫歯の進行が加速します。
◆細菌の活動(ミュータンス菌)…ミュータンス菌は糖質を分解して酸を作り、歯を溶かすことで虫歯を進行させます。この菌の量や活性度が高いと、進行が早まる傾向にあります。
妊娠中は、血液中の「エストロゲン」「プロゲステロン」と呼ばれる女性ホルモンの分泌が増えるため、唾液の量が減ってしまいます。唾液には、口内の汚れを落とす「自浄作用」や溶けた歯の修復をする「再石灰化」など、虫歯から歯を守る役割があります。妊娠によって唾液の量が減り、口内が乾燥すると十分に唾液の効果が発揮されなくなるため、虫歯のリスクが高まります。また、つわりの影響で食事回数が増えたり、歯磨きが辛くなったりすることで口腔ケアが不十分になり、虫歯が進行しやすくなります。
虫歯の進行には、大きく分けて5つのレベルがあります。それぞれの段階に応じた対策を知ることで、適切にケアすることができます。お腹の中の赤ちゃんとお母さんの身体が安定する妊娠中期は、虫歯治療を受ける絶好のタイミングです。妊娠初期や妊娠後期は、母体や胎児に負担がかかる可能性があるため、応急処置に留める必要があります。
歯の表面に白っぽい斑点が見られる段階です。エナメル質が酸で溶け始めていますが、痛みはありません。
対処法:歯を削るなどの積極的な処置は行わず、ブラッシング指導と経過観察を行うことが一般的です
エナメル質に穴が開き始めた状態です。痛みはほとんどありませんが、冷たい飲み物でしみることがあります。
対処法:エナメル質にできた虫歯の部分を削り、樹脂などで詰める治療が一般的です。
エナメル質を超え、象牙質まで虫歯が進行しています。甘いものや冷たいものがしみる症状が現れます。
対処法:象牙質まで広がった虫歯部分を削り、詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)で修復します。
虫歯が神経(歯髄)に達している状態です。強い痛みがあり、食事や睡眠にも影響を及ぼします。
対処法:このレベルでは、神経の治療(根管治療)が必要です。
歯の大部分が溶けて歯冠が崩壊し、歯の根っこ部分のみが残っている状態です。歯の神経は死んでいるため、痛みを感じなくなりますが、治療せずに放置すると歯の根元が化膿して激しい痛みが起こります。
対処法:根管治療では改善が見込めないため、抜歯が必要になります。入れ歯やブリッジ、インプラントなどの補綴(ほてつ)治療によって歯の機能を回復させます。
妊娠中に虫歯にならないためには、適切なセルフケアと定期的な歯科検診が重要です。以下のポイントに気をつけ、口腔ケアを徹底しましょう。
食事や間食の回数が増すので、食後の歯みがきやうがいをこまめに行うようにしましょう。つわりがある場合は、口をすすぐだけでも効果的です。
フッ素入りの歯磨き粉や洗口液を使うことで、歯の再石灰化を促進し、虫歯の進行を抑えられます。
妊娠中でも歯科検診を受けることは可能です。安定期に歯科医を訪れ、虫歯の早期発見とケアを行いましょう。
砂糖を含むお菓子や飲み物を控え、歯に優しい食事を心がけましょう。間食が多い場合は、キシリトールガムを取り入れるのもおすすめです。
妊娠中は虫歯が進行しやすい環境にあるため、早めの予防と適切なケアが大切です。虫歯の進行レベルに応じた対処法を知り、トラブルが深刻化する前にかかりつけの歯科医と相談しながら対処しましょう。また、日頃のケアをしっかり行うことで、妊娠中も快適な生活を送ることができます。健康な歯を保ち、安心して出産の日を迎えましょう。
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記事監修 Dr.中野 純嗣
なかの歯科クリニック
院長 中野 純嗣