ガムやタブレットなど、日常でも耳にする「キシリトール」。“歯に良い成分”というイメージが強い一方で、「本当に効果があるの？」「砂糖と何が違うの？」と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、管理栄養士の視点と歯科の専門知識を合わせて、キシリトールの効果やメリット、選び方のポイントをわかりやすく解説します。
キシリトールは、白樺やトウモロコシの芯などから作られる“天然の甘味料”です。砂糖と同じくらい甘みがありますが、キシリトールには、むし歯の発生やむし歯の進行を防ぐという大きな特徴があります。多くの長期的な臨床研究で、むし歯予防効果が証明されています。
【キシリトールの特徴】
砂糖はむし歯菌のエサになり酸を作り歯を溶かしますが、キシリトールはむし歯菌が分解できず酸を作りません。この点が砂糖とキシリトールの大きな違いです。
通常、砂糖を含む食べ物や飲み物を摂取すると、むし歯菌（ミュータンス菌）がその糖分を分解して“酸”を作り出し、この酸が歯を溶かすことでむし歯が発生します。しかし、キシリトールの場合ミュータンス菌はキシリトールを代謝できず、酸を作れません。そのため、「歯が溶ける酸が作られない」「お口の中が酸性になりにくい」という、むし歯になりにくい環境づくりにつながります。
キシリトールは、歯の表面に存在するカルシウムを再石灰化させるのを助けます。再石灰化とは、歯の表面にあるミネラルが歯に再び取り込まれ、強化されるプロセスのことです。この働きにより、歯のエナメル質が強化され、むし歯が進行しにくくなります。
キシリトールには、唾液の分泌を促す作用があります。唾液はお口の汚れを流したり、酸性になった口内を中和するなどのむし歯予防効果があります。キシリトールと唾液の力が合わさることで、むし歯予防効果がさらにアップします。
キシリトール商品なら何でも良いわけではありません。“選び方”にはポイントがあります。
◆キシリトール含有率100％のを選ぶ
市販のガム・タブレットは「キシリトール以外の甘味料」を含むものも多く、含有率が低いとむし歯予防効果が十分に発揮されません。歯科専売品のキシリトール100％配合のものは、より高いむし歯予防効果が得られ、むし歯の原因を作らないため、就寝前に摂取しても問題ありません。
◆砂糖（ショ糖）が含まれていないものを選ぶ
砂糖が含まれている商品は、むし歯予防効果が相殺されてしまいます。成分表示で砂糖（ショ糖）が入っていないか必ずチェックしましょう。キシリトール以外の糖質が入っていると、その糖分を餌にむし歯菌が酸を生み出してむし歯を作ってしまうリスクがあります。
◆小さなお子さまにはタブレットがおすすめ
小さなお子さまはガムを噛み続けることが難しく、誤飲のリスクもあります。小児向けにはキシリトール100％タブレットが安心です。乳歯の奥歯が生え始めたら「キシリトール習慣」としておやつや歯磨き後に取り入れてみてください。
食後は、むし歯菌が食べかす（特に糖質）を利用して酸を作り、お口の中が酸性に傾きやすくなります。酸性状態は、歯の表面のエナメル質が溶け始める“危険ゾーン”です。ここでキシリトールを摂ると、むし歯菌が酸を作れない→唾液が増えて酸を中和する→再石灰化が促されるという流れが同時に起こるため、食後のむし歯リスクを効率よく下げることができます。
キシリトールはむし歯菌が代謝できない甘味料です。むし歯菌はキシリトールを取り込んでもエネルギーが得られず、逆に消耗してしまうため、菌の数が徐々に減少します。ただし、この状態を作るには「継続」が必要です。キシリトールを摂り始めて 3 ヶ月ほどたつと虫歯になりにくくなるといわれています。
キシリトールガムを噛むと唾液の量が増え、唾液の重要な働きが高まります。唾液は「天然のむし歯予防薬」です。唾液の分泌を促して唾液の働きを最大限に活かしましょう。キシリトールの1日の摂取量目安は5～10g（ガムの場合約4～8粒程度）で、これを1日3～4回に分けて、食後や間食後に1回５〜10分程度噛むのが効果的です。
注意していただきたいのは、キシリトールを摂取すれば歯磨きをしなくて良いということは決してありません。キシリトールはあくまで補助的に使うものです。正しいお口のケアにキシリトールを補助的に摂取することで予防効果が期待できるのです。食品＋歯科ケアの組み合わせこそ、最も効果的な予防と言えます。
※キシリトールは、一度にたくさん摂取してしまうとお腹を壊してしまうリスクがあります。キシリトールの1日摂取量の目安は5～10gです。摂りすぎに十分に気を付けましょう。
キシリトールは、忙しい毎日の中でも手軽に続けられるむし歯予防法の一つです。「なるべくむし歯になりたくない」「家族の歯を守りたい」という方は、ぜひ今日から上手に取り入れてみてください。
ただあくまで、キシリトールは口腔ケアの補助的な役割です。キシリトールを摂っているから歯磨きをしなくていいのではなく、しっかりと口腔ケアをしたうえでキシリトールガムやタブレットを活用しましょう。
当院では患者さま一人ひとりに合わせた栄養指導を行いながら、お口と全身の健康をサポートしています。日頃の食生活やお口の状態で気になることがある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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記事監修 Dr.中野 純嗣
なかの歯科クリニック
院長 中野 純嗣
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