妊婦さんが気を付けるお口のこと《授乳姿勢と歯並び》

歯並びが悪くなってしまうのは、大きくわけると遺伝的要因と、生活習慣などの後天的要因の2種類があるといわれています。後天的要因には食生活、呼吸の仕方、姿勢など様々な要因がありますが、そのうちの一つが授乳姿勢です。授乳姿勢は、赤ちゃんの口のなかの筋肉や顎の発達に大きく関係するため、歯並びにも影響がでてくると考えられています。

今回は、授乳姿勢と歯並びの関係についてお話しします。

歯並びは土台となる顎の発育が大事

お口の機能は生まれてすぐから使い始め、日々育成されます。実は歯が生え始める生後6~7ヶ月頃には、これまで母乳やミルクを飲んだり、お口でおもちゃをくわえて遊んだりすることが顎の成長に関わっています。顎の成長発育はお口周りの筋肉(主に舌)がいかに正しく、正常に使われているかが非常に重要になってきます。

この3つの運動が正しく機能することが、赤ちゃんの時は非常に重要になってきます。しっかりと哺乳行動を行うことができれば、それだけお口の筋肉は正しく発育し、赤ちゃんの顎の発育がいい方向に向いていきます。顎の成長が不十分だと、歯が窮屈になり、歯並びが乱れたり、噛み合わせの問題が生じることがあります。

授乳姿勢は歯並びに影響する

歯並びをよくするには、正しい授乳姿勢でおっぱいをあげて、舌や顎など口周辺の筋肉を発達させることが大切です。授乳姿勢が悪いと赤ちゃんが上手におっぱいを吸えないため、舌や唇の周りの筋肉がうまく働かず、口腔周囲筋や顎骨の発達を妨げてしまうことになってしまいます。その結果、歯並びにも影響を与えてしまいます。授乳するときに首を後ろにそらしていたり、身体がねじれたままの姿勢は、赤ちゃんの負担になり浅飲みにもつながるので注意が必要です。

※浅飲み…おっぱいをあげるときに、赤ちゃんが乳頭の先だけをくわえて吸っている状態

母乳の場合

良い歯並びは、毎日の食事や生活習慣の中で舌・頬・唇の正しい動かし方を身につけることで育まれます。赤ちゃんの時から歯並びを良くするためには、正しい授乳姿勢で授乳して、舌や顎など口周辺の筋肉を発達させることが大切です。

赤ちゃんの口に対してまっすぐ乳首を入れる

授乳時には、赤ちゃんの頭と体が一直線になるように抱っこし、乳首がまっすぐ口に入るように心がけましょう。これにより、赤ちゃんは自然に正しい姿勢で授乳でき、健康な顎と歯並びの発達が促進されます。

  1. 正しい吸い方の促進: 乳首が正しい位置にあることで、赤ちゃんは適切な吸い方を学びやすくなります。これにより、口の周りの筋肉が均等に発達し、将来的な歯並びに良い影響を与えることができます。
  2. 顎の発達: 乳首がまっすぐに口に入ると、赤ちゃんの顎が正しく動き、バランス良く発達します。これが将来の歯の位置や歯並びに関わってきます。
  3. 快適な授乳: 赤ちゃんが無理な姿勢で授乳を続けると、口や顎に負担がかかり、不均衡な筋肉の発達につながることがあります。正しい姿勢での授乳は、赤ちゃんにとっても快適であり、長期的に見ても歯並びに良い影響を与えることが期待されます。

浅飲みではなく深飲みをさせる

座って授乳する場合は、背筋を伸ばして前かがみにならないようにしましょう。正しい姿勢で赤ちゃんと密着することで、赤ちゃんがおっぱいを含みやすくなります。赤ちゃんの正しいおっぱいの飲み方は、乳輪が隠れるくらい深く咥えて乳首が口蓋(口の中の上側の部分)の奥の方までしっかり入っている深飲みの状態です。舌の後方が下がって真空状態となり、乳房から食道へ母乳が吸い上げやすくなります。深飲みをすることで乳首を介して口蓋の成長につながると言われています。

「添い乳」は必要な時以外は控えましょう

人の頭の重さは体重の1/8ほどあり体重が10㎏の子供であれば約1.2㎏の重さになります。顔を横にしたままの添い乳の姿勢は、頭の重さで奥歯に圧力が加わります。そのため 添い乳で寝かせる習慣がついてしまうと、左右非対称な歯並びになります。他にも顔の左右に偏りが出たり、虫歯になりやすいなどの悪影響も及ぼす可能性があります。添い乳は、ママの体調が不良なときに行われる手段であれば問題ないですが、常時習慣化してしまうとお口の機能に影響がある可能性があるため、できる限り添い乳は控えましょう。

哺乳瓶の場合

赤ちゃんがおっぱいを飲む時、舌や口周りの筋肉を上手く使って、口腔機能を発達させていきます。ミルクを赤ちゃんに与える時に必要になるのが、哺乳瓶です。哺乳瓶は、種類が様々ありますが、中には口周りの筋肉をあまり使わなくても飲めてしまったり、哺乳瓶を逆さまにするだけでミルクが垂れてきてしまうような哺乳瓶もあります。そのような哺乳瓶は、お口の機能をほとんど使わず飲めてしまうので、お口の機能の発達不全に繋がってしまいます。

母乳に似た運動ができる乳首を選ぼう

赤ちゃんが母乳を飲む際、唇は乳輪をしっかりと捉えて吸着し、舌を波打たせながら乳首を押し潰して、蠕動様(ぜんどうよう)運動で絞り出すように母乳を飲んでいます。哺乳瓶で飲む際も、できるだけ母乳を飲むときと同じような飲み方ができることが大切です。哺乳瓶を選ぶときは、できるだけ母乳を飲む時に近い動きで飲むことができるものがオススメです。例えば「雪印ビーンスターク社のBean Stalk(ビーンスターク)」や「Doctor Betta ブレイン乳首」などがあります。この他にも種類があるため、商品のパッケージやホームページを確認してお子さまにとって最適なものを選んでみてください。

お母さんのおっぱいから授乳するイメージで行う

母乳ではなく哺乳瓶で授乳する場合も、赤ちゃんの顔が上を向きすぎることなく、お母さんのおっぱいから授乳するイメージで行いましょう。寝かせすぎた姿勢では赤ちゃんはミルクを飲みたくても飲めない状態になってしまいます。赤ちゃんの頭が下がったり身体がねじれたりしないように、頭を支えて上体を起こした体勢を保ちましょう。上半身を起こすことで誤嚥と空気の飲み込みを防ぎ、ミルクが耳管へ流れ込むことの予防にもなります。

おしゃぶりは2歳頃を目安にやめさせる

おしゃぶりには「赤ちゃんを安心させ落ち着かせる」「鼻呼吸を促進する」といったメリットがあります。しかし、おしゃぶりを口の中に入れると、おしゃぶりが当たる歯には力がかかります。そして、口の中のスペースが狭まり、行き場をなくした舌が前歯を押し出します。それにより奥歯を閉じても前歯が噛み合わない「開咬(かいこう)」や、前歯の突き出した「出っ歯(でっぱ)」になるおそれがあります。乳歯が生えそろう2歳を過ぎてもおしゃぶりを与えていると、歯並びに影響を及ぼすかもしれません。おしゃぶりはできれば2歳くらいまでにやめさせるようにしましょう。

まとめ

良い歯並びは、毎日の食事や生活習慣の中で舌・頬・唇の正しい動かし方を身につけることで育まれます。赤ちゃんの時から歯並びを良くするためには、正しい授乳姿勢で授乳して、舌や顎など口周辺の筋肉を発達させることが大切です。赤ちゃんが母乳やミルクを飲みやすいように上記で紹介したポイントを意識してみてください。

正しい授乳姿勢で授乳を行うことができれば赤ちゃんの口腔機能が正しく育っていき、綺麗な歯並びのための準備が出来ていきます。ママや赤ちゃんにとって負担にならないように、無理のない範囲で取り入れてみてください^^

記事監修 Dr.中野 純嗣
なかの歯科クリニック
院長 中野 純嗣

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